ぼうけんのしょ:ただのおたくのようだ

BLゲームや乙女ゲームの感想。R18もあり

神学校・ニール感想

 ずっと気になっていたニールルートをやっと攻略できたので久しぶりの更新です。本当に久々。

  今までの攻略で「『赤蛇の土』についてやたらと詳しい(というか既に結社に入ってる)」「校則違反の常連である不良学生」「でもなぜか退学にはならない」「(ルートによっては)いつの間にか学校から消えている」という、気さくな人柄ながら謎の多いニールでしたが、彼の人生とそこから培ったであろう生き方、そしてマイケルへの真摯な想いに深く胸を打たれたシナリオでした。 

 

 

 共通ルートで『赤蛇の土』への入り方を教えてくれ、預言者ゲームでは絶対に当たりっこない預言をしろと助言をくれるニール。ふざけた軽い口調でも不良という評判でも悪い人間ではなく、今まで何かとマイケルのことを気にかけてくれた彼の正体にはびっくりしました。彼が違反を重ねても退学にならないのは、私は家の力が大きいのではと予想していました。ニールがしょっちゅうローウェル家の家訓なるものを口にするので何となく彼の家族の存在を大きく感じ、きっと実家が何かしらの権力を持っているから、校長もおいそれと罰を与えたりできないのだろう……とぼんやり思っていました。が、真実は全く違うものでした。

 

 マイケルと親しくなる過程で耳にタコができそうなくらいローウェル家の家訓と称し冗談めかしていたり本気だったり、時に調子は違いますが思い詰めがちなマイケルを制したり心配してきたニールですが、本当は過去に家族をすべて失った孤独な身の上でした。マジシャンだったり海賊だったり、そんな胡散臭い経歴の家族がいたのは嘘ではなく本当の話で、しかし全員、それもたった五年ほどのあいだに曽祖父や叔父、両親や弟、飼い犬に至るまで不幸の連続で亡くなっていき彼は一人ぼっちになってしまった。

 

 天涯孤独となった彼が荒み、ぐれている時に街で暴力沙汰の事件を起こした相手が牧師であり、彼がニールを許して教会で色々世話をしてくれたといいます。それまでもマイケルとは別の神学校の生徒ではあったらしいのですが、ニールが聖職者の道に進もうと決めたターニングポイントはこのあたりにあったのではないかと思います。

 

 これを書いてしまうとこれからこのゲームをやろうとする人にとってニールルート最大のネタバレになるのでは……と危惧しつつ書かなければ彼について深く触れられそうにないので書きます。というか感想ブログなので既に攻略済みの人が読んでくれてるんだと思う!ね!もし違うぞって方がいらしたらここで閉じてくださいね。既に上の方でちょっと触れてますが!

 

 

 ~一応ワンクッション~

 

 

 彼はとうの昔に学校を卒業した26歳の牧師であり、ヨークシャー州の教区のひとつを任されていました。しかし聖ヨハネ神学校の卒業生である主教が学校の黒い噂を耳に挟み、生徒に扮して真相を探るようニールを送り込むのです。あの神学校を卒業したことはこれまで世間ではステータスであったのに、悪魔崇拝の結社が長年存在していたことが世間に知られれば逆に悪評となり、その主教の出世に響く。教会に恩のあるニールならば裏切らないと踏んだのだろうとは本人の弁ですが、そういった計算があったのは事実でしょう。他にもニールなら器用に立ち回るだろうとか目的のためには多少荒っぽいこともできるなど他の聖職者より融通が効くだろうとか人柄を見越された部分もあったとは思いますが、とにかく彼は「内々に悪魔崇拝の秘密結社について調査し、できれば表沙汰になる前に潰してほしい」と頼まれ、不自然な時期に編入してきたのでした。

 

 彼はマイケルのことを心配していました。おそらく最初からずっと。マイケルに『赤蛇の土』への入り方を教えたのはただの親切心やお節介ではなかった。ニールは自分も同じく家族を失った経験から、「どんなことでも、今は何か夢中になれることがあった方が彼にとっていいだろう」と考えてマイケルに結社について話したのです。

 

 とてもつらい経験をして心が空っぽになってしまった時、気を紛らわしてくれるものがないと思い詰めてしまう。ニールは自分の人生でそれをよく知っていた。そして結社について教えたからにはルシフェルからマイケルを守ると最初から決めていたと思います。彼の攻略ルートでなくても、預言者ゲームの件では必死にマイケルを止めようとしてくれていたので。「自分が結社への入り方を教えたせいでマイケルに危険が及んではいけない」と責任も感じていたのでしょう。律儀というか面倒見がいいというか、守れるものは守り通したいのがニールだと私は思っています。

 

 かつて彼が家族を失った時、彼にできることは何もなかった。寿命や病気、不幸な事故、そして戦死。どれも個人の力でどうにかできるものではありません。ニールは為す術もなく家族を見送るしかなかったのでしょう。だからこそ、もし次に家族のように想える人ができたなら何を犠牲にしても守りたいと思ったのだと思います。それこそ自分の気持ちを殺すことや命まで失うことも厭わずに。

 

 生意気で可愛くないことばかり言うマイケルをニールは最初から優しい目で見てたと私は考えていますが、マイケルと過ごす時間や交わした会話の数が増えるに従って、「危なっかしくて放っておけない下級生」からだんだん「大切な弟分」に変わっていったのだと思います。生まれてほどなくして亡くなった弟や友人のように思っていた犬と重ね合わせるくらいマイケルのことが大事になった。再びかけがえのない存在ができたことは彼の孤独な心をどれだけ暖めただろう、と考えると切なくなります。なぜならマイケルを大切に想っているからこそニールは彼を突き放し、マイケルの気持ちに気づいて遠ざけようとわざと目の前でやりたくないことをやって幻滅させようとまでした。それでもマイケルはニールのことが好きで諦めなかったから、ニールは彼の幸福を願って置き手紙をして去ったのです。本当にマイケルの幸せだけを祈りながら。

 

 ニールは大人です。キリスト教的な価値観が染み込んだ社会で同性同士愛し合って生きていくことの難しさや苦しさを知っていたのでしょう。だからマイケルにはそんなつらい思いをさせたくなかったし、「普通に」幸せになってほしかった。多くの人と同じように異性を愛し、いずれは子どもに恵まれて、神からも世間からも責められることのない幸福を掴んでほしいと願った。しかし、その手紙を読んだマイケルが誓ったのは別のことでした。

 

 彼の言う通り誰からも後ろ指を指されることのない幸せを掴もう、とマイケルは考えませんでした。だってマイケルはニールを守りたかった。つらいことが沢山あったニールの人生にこれ以上悲しいことが起きないように。ニールを忘れて、いや忘れてなくても遠く離れた地で生きることを選んだらそれは叶わない。マイケルはひとつの決心をします。

 

 大人になろう。頑張って成長して、ニールがもう僕を心配しなくても済むように。

 

 マイケルは自分がニールに守られていることがちゃんと分かっていました。あの手紙だって自分を幸せにしようとして書いてくれたものだと理解していた。だからこんなふうにニールに守られて、その結果離れる道を選ばせることのないように、マイケルは成長した姿でニールに会いに行くのです。

 

 ニールはマイケルに友愛の情は沢山示してくれても、恋人として期待をもたせるようなことは一言も言いませんでした。最後の夜に一線を越えた後も密やかに後悔し神に「罰なら自分が二人分受けるから、こいつは幸せにしてやってください」と祈っていた。

 

 マイケルに何度ニールが好きだ、君はどうなんだと聞かれてもニールが「自分も好きだ」と返さなかったのはもちろんマイケルを惑わせないためでしたが、マイケルはニールの言葉がなくても自分の中にある「ニールが好きだ」という気持ちを大人になるまで貫いた。再会した時に「大人になった時にまだ好きだったら会いに行こうと思っていた」なんてマイケルは言っていたけど、きっと彼が学校を去ったその日から、自分はニールをずっと好きでいるだろうと確信していたのだと私は思います。

 

 ニールルートの最後を飾る再会のシーンと、ささやかながら幸せに溢れたスチルが本当に大好きです。「バレなきゃいいんだ、バレなきゃ」。何度もニールが繰り返していた言葉が大人になったマイケルの口から出ることの尊さ。互いに相手を守りたいと願った先に二人一緒にいられる未来があることが、私はとても嬉しかったです。

 

 次の記事は隠しキャラであるとある人物の感想になると思います。ここまで読んでくださってありがとうございました!