ぼうけんのしょ:ただのおたくのようだ

BLゲームや乙女ゲームの感想。R18もあり

神学校・隠しキャラ感想【前編】

 ついにここまでやってきました。隠しキャラの攻略!

 セシル、ニール、レオニードの三人を攻略後にプレイ可能になるようです。

  

 攻略キャラはここまでプレイしてきた人なら言わずとも分かる、オーガスト神父ですね。秘密結社『赤蛇の土』のリーダー、ルシフェルの正体であり、しかし普段は気さくで明るい神父として生徒たちに人気のあるオーガスト・マクラウドその人です。

 他のキャラのルートでも明らかにされますが、まだ若く見えるオーガスト神父は実はラザラス神父と同年代であるという衝撃の事実が判明します。戦争に従軍した際に頭部に銃弾を受け、一命は取り留めたもののその時から全く老いることのない身体になってしまったと。ラザラス神父の年齢は明言されていませんが、外見から察するに60代前後ではないでしょうか。同じ時を、オーガスト神父は今のままの姿で生きてきたのです。

 一度は学校を出て教会の神父を任されていたものの、歳をとらずいつまでも若い姿であることを次第に住民たちから不審がられるようになり、またこの学校へ戻ってきたという経緯もラザラス神父の口から語られます。不老というものがどれほどの孤独や苦しみをオーガスト神父に与えたのか、想像し難いものであることは確かでしょう。

 

 ここからはオーガスト神父のルートの話になりますが、オーガスト神父は彼自身が神の教えに背くよう後押しする悪魔のようにマイケルを同性愛の道へ誘い込もうとします。ボート小屋でのことは事故、マイケルが不可抗力で勃起してしまったから……という苦しい言い訳はできないこともないにしても、その後マイケルに突然冷たくしたり、かと思えば愛してると囁いたり、それはマイケルの混乱や苦悩を甘い蜜のように啜る夢魔そのもののように見えます。

 わりと序盤の方ででBADエンドになるルートの展開ですが、マイケルがオーガスト神父の告白を受け入れるとそこで二人の関係は終わりになるんですよね。マイケルが退学した後、オーガスト神父からは手紙のひとつもなく、「僕は弄ばれていたんだ」とマイケルが悟ります。そして夢の中でオーガスト神父を刺殺して終わり、という……。

 この夢、これまでのBADエンドと同じように「マイケルは夢だと思っているが実は現実に起こっていること」なんですが、自分を殺しに来たマイケルを見てオーガスト神父は「それでこそ私の天使だ」と喜ぶんですよね。つまり、自分の偽りの愛の囁きに簡単に騙されてしまったマイケルはオーガスト神父の期待した天使ではなかった。おそらく、オーガスト神父にとって自分の誘惑にたやすく屈してしまうような者は彼にとってのミカエルではないのでしょう。だから悪魔である自分を殺しにやってきたマイケルを見て喜んだのだと私は思っています。

 

 ボート小屋で与えられた快感が忘れられずもう一度同じことを望むマイケルを、よりにもよって礼拝堂で、キリスト像の見える場所で穢すというやり方も天使を堕落させようという意図がありありと感じられます。神の前で教義で禁じられている同性愛行為に及ぶ。クリスマスの事件から神を信じないと決めたマイケルの中にそれでも残っていた信仰心が彼を苦しめます。「神よ、どうか僕を見ないでください」と祈るマイケルに「主の御前だっていうのに恥ずかしいねぇ」と嘲笑うオーガスト神父。まるで清らかだったマイケルが堕天使になってしまったことを喜ぶ悪魔のように見えます。しかしオーガスト神父が佇んでいる礼拝堂を目にして、そうしたら何が起こるかを分かっていて扉を閉めたのはマイケル自身なんですよね。だからこそマイケルには欲望に負けた罪悪感が重くのしかかってくるのです。無理やりでも不可抗力でもなく、自分の意志で選んだ道だからこそ。

 

 中盤からの展開には今までになかったような悪意の連続で驚きました。これまで攻略してきたキャラクターが冷たい一面を見せる時は素直になれないゆえの不器用さからか、相手を思ってわざとそうしている時しかありませんでしたが、オーガスト神父はマイケルを弄び、傷付け、怒りや憎しみを抱かせるのを目的として動き、それを面白がります。結社の一員であるアスタロトことアベル・ステイプルトンとはマイケルに「自分たちは恋人同士だ」と囁く前から肉体関係があり、さらに信じられないことに、ボート小屋での件も二人が仕組んだことだということが明らかになります。アベルが背後からマイケルを湖に突き落とし、そこにオーガスト神父が現れて颯爽と助ける。そうすれば一気に距離も縮まるし面白いことになるから、と……。

 

 聖具室で睦み合うオーガスト神父とアベルアベルはマイケルがオーガスト神父にされたことも、自ら祭壇の上で自慰をしたことも全部聞かされており、マイケルに侮蔑と嘲笑の言葉を浴びせます。恋人同士だなんて嘘だった。自分はずっと騙され、二人に陰で嘲笑われていた……あまりの屈辱に立ち尽くすマイケルにオーガスト神父が問います。

 

「私たちの仲間に入れてほしくはないかい?」

 

 ここで選択肢が出ます。二人に背を向けるか、その場に跪くか。バッドエンドから回収していきたいので、ここは後者を選びました。

 どれだけ裏切られ辱められても、二度と主の名前を口にすることも叶わないようなことをするよう仕向けられても、マイケルはオーガスト神父が好きでした。真実を知ってもその気持ちは消えなかった。かくしてマイケルはオーガスト神父という悪魔の誘惑に陥落し、彼の玩具のひとつとなるのです。

 快楽に溺れ、目隠しをされ見知らぬ誰かの慰み者になることも、オーガスト神父の前でアベルと抱き合うことにも慣れてしまったマイケルは悟ります。オーガスト神父はとっくに自分にもアベルにも飽きているということに。いずれ使い古した玩具を捨てるように自分たちは捨てられる。殺されるかもしれないし、見放された絶望で自ら死を選ぶかもしれない。どちらにせよ、そう遠くないうちに死ぬということは決まっているのだ――と。

 

 とんでもなく長くなってしまったのにまだまだ書き足りないので、記事を二つに分けようかと思います。後編ではGOODエンドまで書き切る予定なので、どうぞお付き合いくださるとありがたいです~!それではここまで読んでくださってありがとうございました。