ぼうけんのしょ:ただのおたくのようだ

BLゲームや乙女ゲームの感想。R18もあり

神学校・ガビィ感想

 ついに最後の攻略キャラとなってしまいました。ここまでプレイしてきて神学校というゲームが大好きになっていたので、終わらせてしまうのが残念で寂しくて、でもプレイして本当に良かったと思えるルートでした。

 

 

 これまで5人のキャラクターを攻略してきて、ガビィの光そのもののような不思議な力を感じたことが何度もあり、「ガビィは一体何者なんだろう?」というのがルシフェルの正体が分かった今では一番の謎でした。

 マイケルが幻聴とオーガスト神父の囁きに唆されて道を間違えそうになった時、天啓のようにガビィの声が響いてマイケルが正気を取り戻したり。オーガスト神父のルートでは、ガビィがマイケルの額に自分のそれをくっつけた途端にマイケルに古い記憶が蘇り、ふと気付いた時にはガビィの姿が消えていたり。

 こういった出来事を経て、私が最初に思ったのは「ガビィは天使あるいは神様みたいな存在なのでは」ということでした。彼は人間ではなく神霊的な存在であり、マイケルを救うために天から遣わされた存在だと考え「ガビィはマイケルにしか見えていないのでは?」と疑ったこともありました。が、マイケルと二人で話しているシーン以外でもガビィはあまりにも自然にその場に溶け込んでいたので、どうも違うようだと思い直しました。セシルやニール、他の同室者たちにもガビィは認識されているとずっと思っていました。

 が、違ったんですね。確かにマイケルと他のキャラクターが話しているシーンにもガビィはよく混じっていました。でも思い返してみればセシルやジャック、ロバートやジョシュア、それにニールやラザラス神父たちがガビィだけに向かって言葉を投げかけたことは一度もなかった。逆は、ガビィが誰かに対して何かを言うことは何度もあったけれど。だから私は一度真実に気付きかけながらも、結局物語の中で真相が明かされるまで分からなかったのでしょう。

 

 ガビィルートは、途中まで隠しキャラであるオーガスト神父のルートと共通の展開になっています。

 オーガスト神父とのボート小屋での一件以来、マイケルは自分を穢れて劣った存在だと思い、皆と交流することを避けようとしていました。そのままどんどん暗い方向に進もうとしていたマイケルを再び日の当たる場所へと導いていくのがガビィなんですよね。

 マイケルがオーガスト神父とエントランスで鉢合わせた時、逡巡していたマイケルは隣にいたガビィに手を引かれてロバートたちとフットボールをするために光のあふれるグラウンドの方へと踏み出していきます。このシーンはガビィはマイケルの天使である象徴のように思えました。心に悪魔が宿っているオーガスト神父からマイケルを引き離すガビィ。マイケルがずっとガビィと寄り添って生きていけたらと私も、きっと大勢のプレイヤーが感じていたと思います。しかしその後、衝撃的な事実が判明します。

 ガビィは、マイケルの想像上の存在でした。小さい頃、鏡を見ながらマイケルは「自分には弟がいることにしよう」と考えて彼にガビィと名付けた。鏡写しの自分にそっくりな双子の弟。それは寂しさを埋めるための子どもらしいささやかな思いつきでした。

 成長したマイケルは次第にガビィに話しかけることが少なくなっていきます。しかしあの事件が起きたクリスマスからガビィは実体を伴って確かに存在していました。ガビィの姿はマイケルにしか見えなかったけれど、マイケルはガビィに止められたからその場で死なずに済んだし、またその後もさまざまな場面でガビィに救われていきます。

 

 私は事件が起こる前からガビィがマイケルと共にいたのは「その方がシナリオに違和感がないから」といった設定上の都合ではないのではと思っています。ガビィはマイケルの弟であり彼を守る天使だから、その夜に起こる恐ろしい出来事を察知してマイケルのために彼の心の中から現れたのでしょう。愛しい双子の兄を悪魔から遠ざけ守り抜くために。憎しみや罪悪感や孤独、さまざまな暗い感情に溺れてマイケルが壊れてしまわないように。

 

 すべてが終わった後、消えてしまったガビィを想ってひとり校舎で佇んでいたマイケルはラザラス神父にガビィのことを告白します。静かにマイケルの話を聞いてくれたラザラス神父は、おかしいことだと否定したり笑ったりなどせず「君はきっと自分の中の神に恋をしたのでしょう」と言います。私はその言葉をすとんと受け入れることができました。きっとマイケルもそうだったんじゃないかなと想っています。

 悪魔は度々「自分の双子の弟に恋をするなんてとんでもないナルシストだ、自己愛だ」とマイケルに囁き彼を苦しめましたが、ガビィはマイケルとイコールの存在ではありません。ひとつの体の中にふたつの魂があったのだと私は思います。ガビィはマイケルが生み出した存在だけれど、決して心の防衛装置のようなものではなく、確かに存在する一個の人間でした。マイケルにしか声は聞こえず姿も見えなかったけれど、マイケルにとってガビィは肉体を持って自分の隣に存在する弟であり、ラザラス神父の言うようにマイケルの中にいた神様でもあったのです。

 

 ガビィがマイケルとひとつになり、マイケルの心の中に戻っていくシーンを私は一生忘れられないと思います。あんなに美しくて少し哀しくて、けれど未来への希望に満ち溢れた愛し合い方を今後見ることがあるのかどうかもわからない、それくらい素晴らしかった。本当にぜひ沢山の方にプレイしてほしいゲームです。最高の物語をありがとう、と長くこのゲームを貸してくれた友人に、制作に関わったすべての人達に言いたい。感無量で、感謝の気持ちでいっぱいです。

 

 このプレイ日記を読んでくださった方々も本当にありがとうございました!随分かかってしまいましたが、神学校の感想はこれでおしまいです。ブログのタイトルが若干変わっていますが、今後は乙女ゲームなどBL以外のものも書いていきたいと思っています。それではありがとうございました!