ぼうけんのしょ:ただのおたくのようだ

BLゲームや乙女ゲームの感想。R18もあり

神学校プレイ感想番外編 このバッドエンドがすごい!レオニード編

 神学校はバッドエンドもすごいんだ!!ということでレオニードしかまだ攻略してないにもかかわらず書いていきたいと思います。本当にすごいんだよ……上質なホラー映画のような終わり方をいくつも見せてもらいました。どうでもいいけどタイトル、編って2回言ってますね。さすがに語彙力がなさすぎる。

  BLゲームに限らず、乙女ゲームなどの恋愛シミュレーションゲームやシナリオゲームにバッドエンドというものはほぼ必ずといっていいほど用意されていますが、私はここまでよく作られたバッドエンドを見たのは神学校が初めてです。ハッピーエンドにたどり着けなかった分岐先のオマケという位置づけではなく、明らかに一つの物語として完成されたエンディングがそこにありました。

 バッドエンドというのは攻略ルートに入れなかった(誰とも深い関係になれなかった)共通BADと、攻略ルートには入れたけどすれ違いやら何やらでハッピーエンドを迎えることができなかった分岐の上でのBADにざっくり分けることができると思います。前者は誰ともそこまで関わらなかった分悲惨な終わりを迎えることは少なく、アッサリした感じで終わることが多いようなイメージです。残念でした、という感じ。しかし攻略ルートに入ってからのBADは大抵複数用意されていて、ものによってはだいぶメンタルに来るようなプレイヤーの心をズタズタに刺していくパターンもあります。切なかったり悲しかったり展開は色々ですが、神学校のレオニードBADは全力でホラーに振ってくる気合いを感じて戦慄しました。しかも怖いだけじゃなくて悲しくも切なくもなる。でもやっぱり怖い!そんな感じです。……ではわかりにくいにも程があるので私がゾッとしてグッときたBADを挙げますね。

 

 まずはレオニードと結ばれることなくマイケルが学校を去るエンドです。その頃には既に、マイケルの人生はルシフェルの不吉な預言で覆われてしまっていました。「預言がすべて叶った時に愛する人を自分の手にかける」。私は予想が苦手なので、もしかしてマイケルはガビィを殺すんだろうか、と思いました。レオニードに恋心は抱いていたものの想いを打ち明けることもなく悪魔の足音から逃げるように彼の元を去り、以降は一度も会わなかった(とマイケルは思っている)ので。家族の中で唯一生き残り、退学した後も自分のそばにいてくれるガビィのことは勿論家族として愛しているだろうしやっぱり彼を……?という予想は、思いっきりはずれてました。だいぶ恥ずかしい。

 このエンドを見るためには黒ミサで行われる預言者ゲームで「ありえない預言をする」選択肢を選ぶことが必要です。あえて実現可能な預言にすることで真実に近づこうと危険な賭けに出るのではなく、「何が起こるのか分からないから絶対ありえないような荒唐無稽な預言にしておけ」というニールの助言に従うルートです。ニールがマイケルのことを心配して言ってくれているのはよく分かったので、私はこの選択肢にすれば助かるのかと思ったほどです。が、実際はマイケルの言ったありえない預言の数々――明日はこの学校の校長になる、明後日はアメリカ合衆国の大統領になる――などはマイケルの「夢」の中で次々と叶えられていきました。

 夢の中でマイケルは神学校の校長になっていて、上級生たちのアイドル的存在だったアベルをもののはずみで殴ってしまいます。それは確かにマイケルにとっては「夢」であったはずなのに、実際にアベルは校長に殺されていてその遺体は湖に浮かびました。そして校長は殴った時の記憶がないと主張している……また突然意識があやふやになり、現実と夢の境目を見失いながら、マイケルはホワイトハウスにいる「夢」さえ見ました。ミスタープレジデント。自分をそう呼ぶ男性を見て、マイケルの精神は恐慌をきたしかけます。そして「夢」から逃げるように学校を去り、体の弱いガビィのために働きながら暮らし始めるのですが、悪魔はマイケルを逃さなかった。

 マイケルはまた「夢」を見ます。懐かしい人と一緒に知らない部屋にいる夢を。懐かしい人――レオニードがびっくりした顔で自分を見ている。「どこから入ってきたんだ?鍵は閉めておいたはずだが……」驚いてはいても決してマイケルの来訪を拒絶しているわけではないレオニード。ほとんど話さず喧嘩別れのようになってしまったから、久しぶりに会えて嬉しいと思ってくれているのかもしれない。マイケルもかつて淡い恋心を抱いた人の顔を嬉しそうに眺め、眺めているうちに部屋がきれいに片付いていることに気づきます。その時マイケルの胸に差した暗い影。一体今は誰がこの部屋を片付けているんだろう。前は僕がやっていたのに。そして、いつだったかレオニードが乱雑な部屋の中で見失ってしまいマイケルに探せと言ってきたものと同じペーパーナイフが、マイケルの視界に入ります。僕が見つけてあげたペーパーナイフ。マイケルは胸に芽生えた暗い感情をそのままに、ナイフを手にとり真っ直ぐ切っ先をレオニードの胸に――。

 あれ、また夢を見ていたのか。マイケルは目を覚まします。何だか懐かしい人が出てきた気がするけど、よく覚えていないや。今日も働いて稼いで、体の弱いガビィのために元気の出るような料理を作ってあげなきゃ。マイケルはガビィの「いってらっしゃい」の声を背に受け、朝の光のなか元気に働きに出かけていきます。途中で会った新聞売りのおじさんと顔なじみらしい気さくな会話をして、悪魔に怯えていた頃が嘘のような明るい日の始まりです。

 その時、ラジオからひび割れた男性の声がします。今朝のニュースを伝えているようだけど、電波の状況が悪いらしくよく聞こえません。

「今朝、痛ましい事件が起こりました。……大学の学生が自室で何者かに……。学生の名前は、レオニー……」

 ラジオは耳障りな雑音をさせ、そこでぶつりと切れました。マイケルは何も気づかず、笑顔さえ浮かべながらはつらつと陽光に照らされた朝の道を歩いていきます……。

 

 これ、本当にBLゲームのバッドエンドのひとつとしてのみに収まっていていいクオリティーだろうか……。映画化とかした方がいいのでは、と思わず考え込んでしまうほど恐ろしくも悲しいエンディングでした。説明は不要だと思いますが、マイケルの預言が「夢」の中で叶ってしまったから、ルシフェルがマイケルに与えた預言も叶ってしまったんですね。マイケルがそのことに気付くことは決してないのでしょうが……。

 このバッドエンドが不気味なだけで終わらないのは、レオニードが「夢」で自分を殺しに来たマイケルの顔を見た時、驚きながらもおそらくは喜んでいてくれていたから。片付いた部屋を見てマイケルが不快になったのは、レオニードのことが好きで、自分以外にあのだらしない内面をさらけ出して部屋も片付けさせるような人間がいるのが嫌だったから。あ~~~~~つらい!!つらい!!お互い好きだったはずなのに、それは確かなのに何でこんな悲しい終わり方をしなきゃいけなかったんだろう。やっぱり悪魔のせいなのか?途中でおもむろにつらいと叫び出してここまで書いてきた文章を台無しにするくらいつらい……

 

 あともう一つ。簡単に言うとマイケル発狂エンドです。簡単に言い過ぎですが、これはもうレオニードと結ばれた後のバッドエンドなのでプレイヤーが受けるダメージもことさらでかい。レオニードと想いを伝えあって、体でも愛し合ったマイケルはしかし、まだ不気味な現象に追われていました。預言者ゲームに参加した者にしか聞こえない鼠に似た何かの足音、幻聴に幻覚、怯えて思わず礼拝堂に逃げ込んだマイケルを誘い出そうと友人の声を真似て囁きかける悪魔たち。その時そばについてくれていたガビィの助けもあって、マイケルは迷いなく悪魔よ立ち去れと叫びます。そしてしばらくして、悪魔はいなくなったかのように思えた。気付いたらガビィもいなくなっていたので、マイケルはもう大丈夫と外に出ようとした。のに、もう一人悪魔はいた。それが校長でした。

 マイケルは礼拝堂に逃げ込む前に、不思議な少年と出会っています。彼はクリスと名乗り、頭から全身ずぶ濡れの状態で「校長先生に気をつけて」とか細い声でマイケルに危険を知らせた後、何者かに引きずられるようにドアの外の闇に吸い込まれ消えてしまいました。マイケルの様子を見に来たミスター・マコーリーにその話をすると、彼はひどく動揺します。クリスというのは自分の息子の名前だと。しかもその息子はもう――マイケルはミスター・マコーリーの鬼気迫る様子に怯えて飛び出し、走っているうちにいつの間にか礼拝堂にたどり着いたのでした。

 ここでレオニードルート最後の選択肢が出ます。校長先生の言うことを大人しく聞いてついていくか、それとも先ほどのクリスの言葉を信じるか。前者を選ぶと、何もかも終わります……。それでも選ぶんですけど。だってこのゲーム、BADも秀逸なんだもん!!

 校長は明らかに興奮した様子でした。そしてマイケルを強引に引きずっていき密室に閉じ込め、マイケルの美しい体をその醜い欲望の捌け口にしました。何度も犯される痛みと不快感、耐え難い屈辱、混濁した意識の中でマイケルは悟ります。ああ、あの子は――クリスは、きっと心が先に死んだんだ。だから真っ直ぐ凍った湖の上を歩いていったんだ。死ぬことがわかってるのに、迷いなく。クリスは数十年も前に校長に性的な悪戯をされ強姦され、自ら凍った湖に落ちて死んだ生徒だったのです。

 校長の陵辱はまだ続いている。終わらない。マイケルは涙を流しながら、ふと誰かが目の前に立っていることに気が付きます。それはルシフェルでした。ルシフェルは、マイケルに苦しみから逃れたいかと聞きます。頷くマイケルに重ねて「そのために悪魔と契約しないといけなくても?」と尋ねるルシフェルに、マイケルは縋りました。悪魔に魂を売ってもいいから、この苦しみと痛みと汚辱から僕を救ってほしいと、マイケルは願いました。そして気がつくと、どこか薄暗い場所にいました。

 しばらく周りを見渡して、マイケルはここが映画館であることに気づきます。自分はシートに座っていて、映画を観ているのだと。その映画には気の触れてしまった少年が出ていて、周りに冷ややかな目で見られたり奇怪な言動を嗤われたりしているけれど、ただ一人だけきれいな人がいて、少年の名前を優しく呼びました。「マイク」。きっとあのきれいな人が主演なんだろうな、とマイケルは思います。そして、映画の途中で自分の隣に座っているのがレオニードだということに気がついてマイケルは安心します。自分の大切な人。あの映画に出ているきれいな人にそっくりなレオニード。なのに、どうしてだろう。どうしても、隣に座っているレオニードの顔が……首から上に、牡山羊の頭が乗っているように思えるなんて。マイケルはなぜか可笑しくなって大声で笑い、その笑い声と共にBAD共通のエンドロール……。ティリティリティリティリ……

 

 もうこのバッドエンドの何が悲しいって、その映画の中で起きていることが本当は現実であること。現実ではマイケルは発狂してしまっていて何も分からないのに、レオニードは彼のことをまだ「マイク」と呼んでいること。そのことからレオニードが気が触れていても変わらずマイケルを愛しているのが分かること。

 マイケルの心は校長に犯された時点でもう死んでいて、悪魔は苦痛から逃してやる代わりにその心を奪って一生出てこられない場所に閉じ込めた。だからマイケルが正気に戻ることはもうない。最後にマイケルが大声で笑った時、きっと映画の中に出てくる少年――現実のマイケルも同じように大きな声で笑い、また周りから好奇や同情の目で見られているのだろう。その中でただ一人、アイスブルーの瞳を深く曇らせている青年がいるんだと思うとたまらなくなる。つらい。つらい……もうつらいしか言えない口にされた。本当につらいですよ。いたたまれない。

 

 これ私が特に心にダメージを受けたバッドエンド2選なので、他にもあります。万が一未プレイの方がこれを読んで、「そんなにつらいならやりたくない!」と思ったら困るのでアピールしておきたいんですが、確かにBADは悲惨で本当につらくて悲しいけどハッピーエンドは余りある幸せが溢れてるから!!よろしくお願いします……世界の全腐女子プレイしてほしい。何が書きたかったのかわからないまま終わりますが、神学校レオニードルートはバッドエンドもハッピーエンドも最高だぞ!!読んでくださってありがとうございました~!